分解可能な植物由来のプラスチックの機能を改善、千葉大など

分解可能な植物由来のプラスチックの機能を改善、千葉大など

千葉大学と東京工業大学、東京大学の研究チームは、植物を原料にしたプラスチックの脆さを改善する手法を開発した。このプラスチックをアンモニア水で分解すると、肥料としての効果があることも確認した。使用後の廃棄プラスチックを肥料として利用でき、循環型プラスチック社会の実現に寄与することが期待される。Polymer Chemistry誌で発表した。

現在、プラスチックのほとんどは廃棄されており、リサイクル率は10%以下にとどまっている。安定したプラスチックは材料として有用だが、分解が困難だ。一方、分解性に優れたプラスチックはリサイクル可能だが、強度が求められる材料に用いることができない。このため「安定性」と「分解性」の両方の特性の考慮が循環型プラスチックの鍵となる。

研究チームは、結合としての安定性と利用後の分解性を考慮し、「カーボネート結合」に着目。カーボネート結合は安定しているが、この結合を有するプラスチック(ポリカーボネート)はアンモニア水と反応して肥料として働く尿素に変換できる。先行研究では、植物由来の糖を化学変換して得られる「イソソルビド」を重合した「ポリイソソルビドカーボネート」(PIC)にこの反応を適用し、分解生成物が肥料として利用できることを示した。しかし、材料として利用するにはPICは脆く、その機能を改善する手法の開発が求められていた。

今回の研究では、植物由来の糖から1段階で合成できる低分子(DBM)をイソソルビドと共重合した。この共重合体のポリカーボネートは、汎用の高分子材料よりも高い耐熱性を示し、PICの課題である物性調整や新たな機能付与もできた。さらに、PICと比べてアンモニア水での分解も早いことがわかった。得られた分解生成物を用いてシロイヌナズナの生育実験を行ったところ、肥料として機能することも確認できた。

今回合成した共重合体は、グルコースなど植物由来の糖を原料としており、バイオエンジニアリング・プラスチックとして今後の利用が期待されている。ここで提案した手法が「プラスチックの廃棄問題」と「人口増加による食料問題」を同時に解決する、革新的なシステムへと繋がることが期待される。

画像提供:千葉大学(冒頭の写真はイメージ)