森林の炭素吸収力 30年間維持されていることが明らかに 東大

森林の炭素吸収力 30年間維持されていることが明らかに 東大

東京大学は、大学院農学生命科学研究科の伊藤昭彦教授らが参加した国際研究チームの調査により、地球上の森林の炭素吸収力は過去30年間変わらず維持されていることが明らかになったと発表した。しかし、その内訳は大きく変化しており、今後も炭素の吸収力を維持し続けるには、森林減少と劣化による炭素放出を食い止めることが必要だ。

森林生態系による炭素吸収力は地球上の炭素循環の中でも最も重要な吸収源であり、気候変動の理解・予測・対策に大きな意味を持つ。今回の分析は各国・地域の統計や観測に基づくデータを集めて詳細に解析したもので、2011年に最初の分析が行われたものをバージョンアップしたもの。

分析の結果、世界の森林の炭素吸収力は1990年代と2000年代は年3.6±0.4ギガトンで、2010年代も3.5±0.4ギガトンでほぼ変化がなかった。しかし、内訳をみると、温帯林や再生された熱帯林では吸収力は増加していたが、北方林や熱帯原生林では減少していたことがわかった。しかも、森林以外の陸域の炭素吸収量の総量は増加しているため、全吸収量に占める森林の寄与割合は低下していることがわかった。さらに、森林の吸収力の3分の2に相当する量の炭素が熱帯林の破壊により排出されており、それを考慮すると、森林の炭素吸収力は2010年代では1.39±0.69ギガトンになることがわかった。

今後の森林の炭素吸収力を維持するためには、森林減少と劣化による炭素放出を食い止めることが重要である。しかし、現在でも森林の老齢化や熱帯原生林の減少と劣化が続いており、またアマゾンでは強い干ばつが頻発し、森林の吸収力を低下させている現状がある。そのため、植林やよりインパクトの小さい木の収穫方法の実施、山火事が起こりにくい森林の管理なども必要とされる。本研究は森林の炭素吸収力の維持の一助となるものであり、さらなる研究により、森林機能の理解を深めることが重要である。研究結果はNatureに掲載された。

(写真はイメージ)