
星を食べる“中間質量ブラックホール”を発見、NASA
米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線望遠鏡が協力し、珍しい中間質量ブラックホール(IMBH)が遠い銀河で星を食べているところを発見した。このブラックホールは「NGC 6099 HLX‑1」と呼ばれ、地球から約4億5000万光年離れたヘルクレス座の巨大楕円銀河NGC 6099の外縁に存在する。X線や可視光による観測から、ブラックホールが恒星を破壊する「潮汐破壊イベント(TDE)」が進行中と考えられている。天体物理学ジャーナル誌に4月11日に掲載された。
天文学では、太陽質量の数倍ほどの小さなブラックホールと、銀河の中心にあるような太陽質量の数百万〜数十億倍の超大質量ブラックホールが知られているが、今回特定されたような太陽の数百倍〜数十万倍の質量を持つIMBHは非常にめずらしく、活動していないと検出が難しい。これまでにもいくつかの候補が報告されてきたが、正確に観測できる証拠は限られている。
今回の発見は、IMBHが実際に恒星を捕まえて破壊し、X線を大量に放出している現場を可視的に捉えた珍しい例だ。最初は2009年にチャンドラで異常なX線源として見つかり、2012年には明るさが約50〜100倍に達してピークとなり、その後2023年まで徐々に減少した。X線の温度は約300万度と解析され、可視光ではハッブルが周囲に小さな星団を確認した。星団内の星間の距離はわずか8000億キロメートルほどと非常に密集しているため、ブラックホールが長時間にわたり“食事”を続けていると考えられている。
このようなTDEによるIMBHの検出は、ブラックホールの形成や進化を理解する上で重要な手がかりとなる。大きな銀河が小さな銀河を吸収することで成長するのと同様に、IMBH同士が合体することで、さらに巨大なブラックホールを形成するための種となるという説だ。
今後、ベラ・C・ルービン天文台などによる広範な空の監視と、ハッブルやジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による追観測により、さらに多くのIMBHやTDEの発見が期待される。これにより、宇宙でブラックホールがどう成長し、どのように分布しているかをより深く理解できる可能性がある。
画像提供:NASA