深海のクジラ遺骸に生物群 数千km離れても構成類似

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2月24日、南大西洋の水深4204mの海底で発見したクロミンククジラの遺骸に群がる生物(鯨骨生物群集)を分析した結果、41種という非常に多様な構成の生物群集で、その全てが新種である可能性が高いと発表した。今回の発見により、これまで謎とされてきた鯨骨生物群集の成り立ちや広がりを紐解く大きな手がかりを得ることができたとしている。

光の届かない深海の熱水域や湧水域には、地球内部から噴出する化学物質をエネルギー源とする化学合成微生物が生息している。化学合成生物群集はそれぞれが数百~数千kmの単位で離れているにも関わらず、群集を構成する種が類似していることから、ハワイ大学のクレイグ・スミス博士が1989年に「熱水噴出孔・湧水生物群集の間をつなぐ飛び石の役割を果たしているのが鯨骨生物群集である」とする「飛び石仮説」を提唱した。

これまでの発見例は、北東太平洋や日本近海などの特定の海域に限られており、仮説が全球スケールであるかどうかは分かっていなかった。今回JAMSTECが分析したのは、2013年4月にブラジル沖サンパウロ海嶺の調査で、有人潜水調査船「しんかい6500」が発見した鯨骨生物群集。世界8例目で、大西洋海域では初めて確認されたものだ。これまで見つかっている鯨骨生物群集や熱水・湧水生物群集とは遠く離れた場所にも関わらず、構成種は類似しており、飛び石仮説が全球的な広がりを持つことを強く支持する結果となった。

ゴカイの仲間28種、コシオリエビ数種、ルビスピラ属など巻貝2種、ホネクイハナムシ1種など少なくとも41種を確認。形態レベルではそのほとんどが新種である可能性が高く、遺伝子レベルでは巻貝のルビスピラ属、ホネクイハナムシなどは新種であることが判明している。
 

(写真はイメージ)

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