24億年前の地球で酸素が大量出現したメカニズムを解明 岡山大学

岡山大学は20日、約21~24億年前に地球の大気に大量に酸素が出現した「大酸化イベント」のメカニズムを解明したと発表した。海水中のニッケルと尿素が重要な役割を果たしていたことがわかった。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

地球の大気には約21%の酸素が含まれていて、地球の生物はこれを呼吸することで生命を維持している。他の惑星の大気には酸素はほとんど含まれておらず、地球も約24億年前に大酸化イベント(Great Oxidation Event, GOE)が起きるまでは無酸素状態だった。GOEの主要な酸素供給源は酸素発生型光合成細菌であるシアノバクテリアだと考えられている。しかし、GEO以前の約10億年間にもシアノバクテリアが出現していたにもかかわらず、大気中の酸素濃度は低いままで、なぜ酸素濃度がその時点で急上昇したかが不明だった。

研究グループは、始生代(約40~25億年前)の海水を模した環境を再現して実験を行った。当時の大気はメタン化細菌によりメタンが豊富に存在した。さらに紫外線の照射によって海水中に尿素が存在し、シアノバクテリアにとって重要な窒素源となっていたと考えられる。その一方、ニッケルは尿素をアンモニアに変換する酵素の活性に必要な元素だが、ある程度以上の濃度では逆に阻害することが確認できた。

約24億年前まではシアノバクテリアは局所的に成長するのみで、全球的な酸素増加にはつながらなかった。海水中のニッケル濃度は約30億年前から減少し始めたことがわかっており、24億年前からシアノバクテリアが爆発的に増殖してGOEが発生したと推定できる。

この研究から、ニッケルや尿素といった微量元素と化合物が地球環境の変化に重要な役割を果たしていたことが示され、地球の酸素環境進化に関する理解が深まった。さらに地球生命の進化史を探る研究にも重要な示唆を与えることが期待される。

初期地球大気中の酸素分圧進化モデル。太陽紫外線フラックス、海水中のシアノバクテリア量、メタン生成菌とシアン化水素量、尿素量の連続的変化もそれぞれの色の濃淡で示している。

画像提供:岡山大学(冒頭の写真はイメージ)