
塩分の多い水中で有機物を分解する技術を開発 原子力機構など
日本原子力研究開発機構(原子力機構)と高知大学は11月10日、従来は難しかった塩分の多い水中の有機物を光触媒で分解する技術を開発したと発表した。薬剤や特別な装置を使うことなく簡便に有機物を分解できることから、産業の持続性向上や安全な水供給への貢献が期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
汚水や海水などから大量に含まれる塩分を取り除くには膜処理を行うが、有機物が含まれていると膜を詰まらせてしまう。そのため事前に有機物を取り除くことが必要であるが、オゾン処理や酸化剤などを用いると分解効率が低下しコストが高くなる。光触媒を用いて有機物を分解する方法もあるが、塩類が多い環境では反応が塩類やイオンによって邪魔されて効率がとても低くなるという問題があった。
研究グループは、光触媒として用いられる酸化タングステンの微細粒を、水を含んだ多孔質ゲル(ハイドロゲル)に混ぜ込んだ、新しい材料「光触媒ゲル」を開発した。製作過程で内部に髪の毛1~2本分の太さ(100~200μm)の複雑な水の通り道が形成されて、塩類の多い水中でもゲル表面に有機物を吸着する特性がある。このため、光の通りやすさと光触媒と有機物の出合いやすさを維持できる。
有機汚染物質の分解試験を行ったところ、塩類を含まない水中でも従来の光触媒粉末や光触媒固定ガラスに比べて、光触媒ゲルは優れた分解効率を示した。NaClなどの塩類が比較的高濃度(100mmol/L)で存在する条件下では従来方式と比べて4~13倍高い分解効率を示した。 今回開発した光触媒ゲルによって、塩分の多い水中での有機物の分解が可能になった。光触媒ゲルは比較的容易に大面積・多形状で製作することができ、実験室レベルから実用レベルまでの拡張も可能である。今後は産業排水や海水への応用展開を目指し、実用化を見据えた耐久性や長期連続稼働性の向上に取り組んでいくとのこと。

画像提供:原子力機構(冒頭の写真はイメージ)

