
福島廃炉支援へ前進 耐放射線Wi-Fiチップ開発 科学大など
東京科学大学と高エネルギー加速器研究機構は16日、原子炉内部のような超高線量放射線環境でも動作するWi-Fi受信チップを開発したと発表した。原子炉内を想定した500キログレイ(kGy)という極めて高い線量のガンマ線を照射しても、ほとんど性能を損なわず通信を維持できる。廃炉作業の安全性と効率性の向上につながることが期待される。研究成果は米サンフランシスコで開かれた国際会議で発表された。
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉現場では、建屋の損壊や高線量環境のため、ロボットやドローンによる遠隔作業が中心となっている。だが現在は有線LANによる制御が主流で、複雑な建屋内ではケーブルの取り回しが難しく、絡まりや可動範囲の制限が課題となってきた。そのため無線化が望まれる一方、一般的な半導体は過酷な放射線環境下では短時間で故障や性能劣化を引き起こすことが知られている。宇宙用途でも耐性は数百Gy程度とされ、原子炉内部で想定される線量には遠く及ばなかった。
研究チームは放射線耐性に実績がある65nmCMOSプロセスを用い、従来の高周波回路設計とは異なる設計指針を採用した。酸化膜が薄く電荷の蓄積がしにくいために特性劣化を起こしにくいという特徴があり、さらにトランジスタ数を最小限に抑え、素子サイズをあえて大きくすることで、放射線による劣化の影響を低減した。コバルト60線源による照射試験では、500kGy照射後も信号利得や雑音指数の劣化はわずかで、Wi-Fi 4規格の64QAM信号で十分な通信品質を確認した。
この研究の成果は、福島第一原子力発電所の廃炉作業を、飛躍的に安全かつ効率的に推進するための基盤技術となることが期待される。今後は送信機を含むチップセット化を進め、原子炉内の双方向無線通信の実現を目指す。さらにこの技術は廃炉支援にとどまらず、宇宙探査や核融合炉など極限環境での通信基盤としての展開も期待される。


画像提供:東京科学大学(冒頭の写真はイメージ)

