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[書評]震災復興当事者への一歩に『福島の原風景と現風景』

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から、15年が経とうとしている。震災復興を、私たちはどこまで“自分ごと”として考えられているだろうか。

本書は福島長期復興政策研究会(現、福島復興学会)の有志が、福島原発事故が発生してから13年が経過した2024年時点において「それぞれの目に映る福島の復興の風景を抽出することで、福島の復興に向けた学術的かつ社会的な知的基盤に厚みを加えるとともに、国民の一人ひとりが福島の問題を当事者として経験する手がかりを提供すること」を目的に書いたものだ。「学術的かつ社会的な知的基盤」とある通り、さまざまな角度からの13年分の調査資料に基づいて構成されている。

著者の16人は、都市設計やまちづくり、コミュニティデザインなどを専門とする大学教員という立場のため、論文をそのまま読んでいるといっても過言ではないくらいの硬さと難しさがある。しかし、すべてが客観的なデータによる味気ない文章かと言われるとそうではなく、著者一人ひとりの熱量が約400ページに詰まっているのを感じる。研究の発端は主観的な意見や感情ではないかと感じるくらい、「福島を忘れさせたくない」「現在の福島を見てほしい」という著者たちの思いがこもっている。

福島原発事故によって避難を余儀なくされた人たちにフォーカスを当てて、さまざまな角度から震災前と震災後の風景を比べている本書。「人の復興」よりも「空間の復興」を優先させたのは“復興ごっこ”をしているようだという痛烈な指摘もある。さらに、原発事故は人為災害であり、さまざまな人間活動の結果として発生したのであれば、私たちも関与していることになるのではないか、というどきっとする一言もある。一方で、避難した人たちが故郷を離れたことを後悔して避難先で前を向けない現状に、「とことんお話を聞いて自己決定できるまでつきあう」とサポートしている人や、故郷に帰らないと決めてからつながりを継続させるために故郷に通い始めたという人など、新聞やニュースでは取り上げられない人々の様子まで細かく報告され、福島の復興を俯瞰して知ることができる。

あとがきには、「本書の執筆者は『解』を示していない」と書かれている。原子力災害は続いているし、解を示しうるほどに被災者や被災地を理解していないと編者の川﨑氏はつづっている。一人ひとりが納得できる「解」を見つけるためにも、まずは事実を知ることから始めてみたいと思える一冊だ。

 

『福島の原風景と現風景 原子力災害からの復興の実相』
編者:川﨑興太
発行日:2024年12月24日
発行:新泉社