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[書評]「読むこと」を支える、書体デザインの役割とは 

パソコンで文書を作る際などに、「UD」とついたフォントを目にしたことはないだろうか。多くの人にとって、その意味を意識する機会は少ないかもしれない。本書は、「UD(ユニバーサルデザイン)」の考え方をもとに開発された書体を題材に、読みやすさとは何か、また誰もが自分に合った方法で情報にアクセスできる社会について考える一冊である。

開発の転機は弱視の子どもたちの学びの現場

本書の中心となるのは、著者である高田裕美氏が開発に携わった「UDデジタル教科書体」だ。開発の過程で高田氏が見学したのは、メガネやコンタクトレンズを使っても見えにくく、学習に困難を抱える弱視の子どもたちが学ぶ現場だった。

小学校の教科書などで使われる「教科書体」は毛筆の楷書に近く、「とめ・はね・はらい」を反映した、文字の形を学ぶために適した書体である。しかし、線の太さに強弱があるため、弱視の子どもたちにとっては細い線が見えにくく文字全体を捉えづらくなってしまうという。一方で、線の太さが均一な「ゴシック体」は見やすいものの、学校で習う文字とは形が異なるものもある。たとえば「山」の字は、左下の出っ張りが一画のように見え、本来三画で書く文字が四画に見えてしまうことがあるのだ。

こうした現場での気づきを転機に、さまざまな理由で読みにくさを抱える人たちの声にも耳を傾けながら、より多くの人にとって見やすく読みやすい文字を目指して生まれたのがUDデジタル教科書体である。

読みにくさを抱える人に寄り添い、選択肢を増やす

本書を通じて伝わってくるのは、「より多くの人にとって読みやすい文字」を目指すというユニバーサルデザインの考え方だ。すべての人にとって完璧に読みやすい書体をつくることはできない。しかし、読みにくさのある人に寄り添いながら、多くの人にとって使いやすい選択肢を増やすことはできる。これは、はじめから多くの人が利用しやすいものを目指すユニバーサルデザインの考え方にも通じている。

本書自体にもUDデジタル教科書体が使われており、本文の漢字のほとんどにルビが振られている。内容だけでなく、本そのものにもユニバーサルデザインの考え方が反映されている。普段何気なく使っている文字の背景にある工夫や、「読むこと」を支えるデザインの役割に気づかせてくれる一冊である。

『みんなの「読める」をデザインしたい わたしは書体デザイナー』
著 者:高田裕美
発行日:2025年11月13日
発 行:Gakken

(写真はイメージ)