家庭のルーターがサイバー攻撃の「踏み台」に 国内で数万台規模を確認

近年、家庭で使うルーターやネットワークカメラなどのIoT機器が、知らないうちにサイバー攻撃の中継役として悪用されるケースが確認され、問題になっている。総務省、警察庁、情報通信研究機構(NICT)は7月21日、こうした「レジデンシャルプロキシ」の実態調査の結果を発表した。

レジデンシャルプロキシは、家庭などにあるIoT機器を経由して第三者がインターネット通信を行う仕組みのことで、攻撃者は本来の通信元を分かりにくくできる。NICTの観測では、2026年1月以降、1日最大約2万7000のIPアドレスが出口ノード(通信の出口となる機器)として確認され、国内にも少なくとも数万台規模のレジデンシャルプロキシが存在すると推定されている。

悪用されるのはルーターだけではない。ネットワークカメラやデジタルフォトフレームなどのIoT機器のほか、「無料で動画を視聴できる」とうたうストリーミング機器などが使われる場合もある。また、通信帯域を提供することで収益を得られるとうたうサービスなどを通じて、利用者が意図しないまま機器が中継役になるケースもある。NICTは、利用者自身が気付かないうちに自宅のIoT機器やインターネット回線が攻撃通信の中継に利用され、被害や不利益を受けるおそれがあると注意を促している。

実際の犯罪にも利用されている。警察庁の分析では、2024年のインターネットバンキングに係る不正送金事犯のうち、少なくとも1,918件でレジデンシャルプロキシが利用され、被害額は約28億9000万円に上った。これは被害件数全体の約44%、被害額全体の約33%に相当する。攻撃者は一般家庭などの機器を経由することで、攻撃の発信元を追跡しにくくしながら、不正アクセスなどを行っていたとみられる。

この問題は日本だけに留まらない。英国など15の政府機関等は2026年4月、中国と関連する攻撃者が、侵害した家庭や小規模事業所向けのルーターなどを大規模な「秘匿ネットワーク」として利用していると警告した。こうしたネットワークは攻撃元を隠すために使われ、Volt Typhoon(ボルト・タイフーン)やFlax Typhoon(フラックス・タイフーン)※などによる利用も確認されている。ただし、日本で確認されたレジデンシャルプロキシがすべて中国と関連する攻撃者によるものという意味ではない。私たちも、IoT機器のOSやファームウェアを最新の状態に保ち、通信帯域を提供するサービスなどを安易に利用しないことが重要だ。

※Volt Typhoon(ボルト・タイフーン)/Flax Typhoon(フラックス・タイフーン)は、中国政府の支援を受けているとされる高度なサイバー攻撃グループ(APTグループ)の名称。主に世界の重要インフラや政府組織を標的に、長期間にわたって気付かれないように潜伏してサイバー活動を行っている。

レジデンシャルプロキシの仕組み。家庭のIoT機器などを経由することで、攻撃者の通信元が分かりにくくなる(NICT資料より)

(冒頭の写真はイメージ)