13万年前のアメリカ大陸に暮らしたヒト族

ホモ・サピエンスより前にアメリカ大陸にいたヒト族

ホモ・サピエンスは、新大陸に到達した最初のヒト族ではなかった――。そんな論文が27日、英科学誌『ネイチャー』で発表された。13万年前のゾウの仲間マストドンの骨に、加工の跡が見つかったというのだ。ホモ・サピエンスが北米に到達したのは古くても2万年前。それより10万年以上も前に、ネアンデルタール人またはデニソワ人と呼ばれるヒト族がアジアから北米に渡り、栄えていたようだ。

アジアにいた人類は約2万年前、海面の低下で陸続きとなったベーリング地橋を渡ってアラスカに入り、1万4000~1万5000年前には南アメリカの南端にまで達した。しかし、それ以前にも石器に似た岩や、人間によって被害を受けたと見える大きな動物の骨などが見つかっていると主張する考古学者もいる。今回の論文の共同執筆者である米旧石器時代研究センターのキャスリーン・ホレン氏と夫のスティーブン・ホレン氏は、4万年前のアメリカにヒト族が存在していた証拠として米国中西部のいくつかの場所を挙げている。しかし、多くの科学者はこうした主張を懐疑的に見ていた。

今回の論文は、1992年にサンディエゴ近郊の道路工事中に発見されたマストドンと呼ばれる絶滅したゾウの骨の断片に焦点を当てた。共同執筆者であるサンディエゴ自然史博物館の古生物学者のトム・デメレ氏が、5カ月にわたって発掘調査を行ったものだ。ホレン氏は2008年にデメレ氏を訪ね、箱に入った骨を見た。「これまでに見てきたものと同じ破砕パターンがあった」とキャスリーン・ホレン氏。骨は大きな石の上に置かれ、「ハンマー」で叩かれたかのように見えた。マストドンの骨髄を取り出すために、またはより繊細な骨の道具を作るために使用したものだという。

これらの骨には放射性炭素年代測定に使用できるだけのコラーゲンは含まれていなかったため、放射性ウランとトリウムの相対的なレベルを測定する手法をとった。その結果、約13万年前のものであることが分かり、スティーブン・ホレン氏は「多くの研究者が懐疑的になるだろう。ほとんどの考古学者が予想している時代よりもはるかに古いからだ」と述べた。

アフリカ大陸以外に住む現世人類の先祖は、約10万年前にアフリカ大陸から世界中に拡がっていった。一方、デメレ氏と彼の共著者は、中国から10万年前のホモ・サピエンスに似た歯が見つかっていることも挙げて、ネアンデルタール人やデニソワ人と呼ばれる現世人類とは別のヒト族が先にアメリカ大陸に移住していた可能性を提示した。

画像提供:A. Rountrey, C. Abraczinskas and D. Fisher/Univ. Michigan
 
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