メダカのメスは、顔なじみのオスを見分けている

メダカが「顔」認識 メスは顔なじみのオスを見分ける

岡山大学の竹内秀明准教授と東京大学の王牧芸特任研究員は、メダカの個体識別能力を調べる中で、人間と同様にメダカがほかのメダカの顔を認識して見分けていることを発見した。科学論文のオープンアクセス誌『イーライフ(eLife)』で11日に発表した。

メダカのメスは、身近なオスを好むことが知られている。5時間共にした相手の場合、交配までの時間が短くなる。しかし、親しいオスなのか未知のオスなのか、メダカが個体をどのように識別しているのかは明らかになっていなかった。

今回の実験ではまず、半透明のフィルムを使い、オスの動きは分かるが外見は見えないようにしたところ、このオスに対するメスの反応は、未知のオスに対するものと大差なかった。また、オスの外見だけ見えて、動きは透明なコンテナを使って固定した場合、メスがオスを受け入れるのに必要な時間は有意に短かった。さらに、尾が隠されたオスと頭が隠されたオスを比較した場合では、頭が隠されたオスの方がメスによって受け入れるまでにかなりの時間を要した。
これらのことから、顔を含む頭部の視覚的な情報がメダカの個体識別に重要な意味を持っていることが分かった。

さらに、視覚的に慣らした後にオスの顔に黒点を書き加えた場合でも、メスは依然としてオスを親しみのある仲間として受け入れた。
一方で、上下反転した顔を識別するには多くの時間を要したが、左右反転した顔や顔以外の部位を上下反転した場合には識別に問題はなかった。これは、人間やいくつかの哺乳動物で知られる古典的な「倒立顔効果」に相当する可能性がある。倒立顔効果とは、正立顔は他の部位に比べて特異的に処理されているため、目、鼻、口など顔の要素の全体的な配置と個々の特徴を組み合わせた情報が上下反転した倒立顔では見分けにくくなることをいう。

すべての個体識別の中で、顔認識は最も特殊な能力の1つであり、数多くの異なる進化系統の動物で報告されている。メダカと哺乳動物とでは、顔認識の機構や神経基盤が異なるかもしれないが、系統発生的に遠いグループでの比較から興味深い結果が得られるかもしれない。

画像提供:岡山大学・東京大学

 
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