買物弱者への支援事業 多くは赤字、実態把握も課題

買物弱者への支援事業 多くは赤字、実態把握も課題

総務省は19日、「買物弱者対策に関する実態調査」の結果を公表した。人口減少や少子高齢化が進む中、地域によっては食料品など日常の買い物が困難な環境が生じており、このような状況にある「買物弱者」の人々に対する対策の実施状況や取り組み把握のために調査を実施。45%の事業で黒字または均衡状態にある一方で、赤字状態や、行政の支援なしに継続が困難なケースが多いことが分かった。

調査では、買物弱者対策は、企業やNPO、社会福祉法人、地域住民による組織等で実施されていることが分かった。代表的な取り組みとしては、移動販売車の活用や買物代行、買い物が出来る場所へ移動できるバスの運行など。もともと高齢者支援や障害者支援、地域活性化が目的の事業が、結果として買物弱者支援となっている事業が多かった。

ただ、収益を上げることが困難で赤字の状態や、行政の支援なく取り組みを続けていくことが困難な組織が多いことがわかった。調査時点で継続しており、かつ回答が得られた193事業のうち、収支が「黒字または均衡」が87事業(45%)だった。このうち30事業は補助金等で赤字を補填している。
山間部を中心とした過疎地では、利用者の人口減少や高齢化により、収益が十分に上げられず、赤字を自己負担する状況や、取り組みを終了する例もあった。

現状として、買物弱者に関する施策を統括的中心的に行う省庁はない。買物弱者という言葉は、主に過疎化などの影響で交通網・流通網が弱体化し、日常生活のための買い物が困難な状況に置かれた人々のことが想定されているが、明確な定義は各省庁や地方公共団体によって異なり、一つに定まっていない。同省はこのような人々が今後増加していくと見込んでいる。
農林水産省では、65歳以上で自宅から500m圏内に食料品販売店がなく、自動車を保有していない者を買物弱者としており、2010年には372万人程度いると推計している。経済産業省では、60歳以上で日常の買物に不便と感じる者としており、2014年に700万人程度と予想している。

買物弱者に関する調査を何らかの形で行っている地方公共団体は半数にとどまっていることも分かり、実態調査が行われていない分、問題が潜在化してしまっている可能性がある。事業継続のために、行政の積極的な関与と支援が求められる他、住民や自治会などの地域組織の連携が求められる。

 
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