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粘菌アルゴリズムを用いて避難経路を導出 安全・迅速・円滑化目指す

粘菌アルゴリズムを用いて避難経路を導出 安全・迅速・円滑化目指す

電気通信大と東京都産業技術研究センターは17日、山本佳代子教授らの研究グループが粘菌アルゴリズムを用いて複数の避難場所への複数の避難経路を定量的に導出する手法を開発したと発表した。

災害発生時に円滑に避難するためには避難経路の選択が重要だ。しかし、従来の経路探索の手法では単一の経路を示すのに留まり、複数の避難場所に向かう複数の避難経路の優先度を追加計算なしに定量的に比較することができなかった。同研究では粘菌アルゴリズムを用いた経路導出手法によって、これらの課題を解決することができたという。

粘菌は単細胞生物でありながら、数センチから数十センチものサイズのアメーバとして森のなかを移動するときもあれば、胞子をホコリのように飛ばすときもある。博物学者の南方熊楠みなかたくまぐすがその特異な生態に関心を寄せて研究を続け、昭和天皇に標本を献上したことでも知られている。

粘菌アルゴリズムとは、粘菌の形成するネットワーク構造に着想を得た計算法である。道路網を粘菌のネットワークに見立て、道路長は管長、優先度は流量、始点と終点は原形質の流出入点と解釈した。これにより原形質の流出入点を結ぶ輸送管の流量を求めることで、避難経路としての優先度を比較することができるようになった。

このアルゴリズムには、複数の避難終了地点への複数経路を追加計算なしで定量的に比較できること、優先度の計算が一回完了した後は多量の計算をしなくても迂回路を導出できること、優先度の値が収束するまで計算を行わずに優先順位が確定した時点で計算を終了してもよいこと、といった利点がある。今後は災害危険度をより考慮して、精度をさらに向上させていくという。

(写真はイメージ)