超巨大星の表面温度を正確に測定 爆発までの進化を予測

東京大学大学院の谷口大輔氏(博士課程1年)らは、オリオン座のベテルギウスのような赤色超巨星の表面温度を簡単かつ正確に決定する手法を確立した。まるで「体温計」を向けるように温度が測れるようになったようなもの。さまざまな赤色超巨星の観測を行うことで、超新星爆発を起こすまでの進化の予測の正確性を高めることができると期待される。

太った星の体温測定

2019年末から2020年初頭にかけて、一等星だったベテルギウスが突如として二等星まで暗くなり、超新星爆発の予兆なのではないかと話題を呼んだ。

ベテルギウスはもともと青かった大質量星(太陽の約9倍以上の質量を持つ恒星)が進化し、赤く膨張した赤色超巨星の一つ。赤色超巨星は超新星爆発によってその一生を終え、宇宙空間にエネルギーやガスをばらまくことが知られている。

星の進化と超新星爆発の時期を正しく予測するには、正確な表面温度を知ることが重要だが、これまでの温度決定法では、構造が複雑な赤色超巨星の上層大気に起因する系統誤差を排除することが難しかった。

谷口氏らは、上層大気の影響を受けずに温度を決定するため、主に恒星の表面近くで形成される鉄原子吸収線のみを用いた温度決定法を確立した(H2OやCO等の分子吸収線は、薄く広がった上層大気の中で主に形成される)。

具体的には、東京大学および京都産業大学神山天文台が共同開発した赤外線高分散分光器WINEREDで近赤外線のYJバンドのスペクトルを取得し、このスペクトルから十分に孤立した52本の鉄原子吸収線を探し出した。続いて、温度が既に正確に決定されている9個の赤色巨星を用いて、11ペアの鉄原子吸収線のライン強度比(観測スペクトルに現れる2本の吸収線の深さを測定して比を計算するもの)を使って、正確な温度を決定するための関係式を較正した。

赤色巨星と赤色超巨星では明るさが100倍程度異なるが、同じ元素の吸収線の間のライン強度比は明るさに依存しないため、赤色巨星で較正したライン強度比–温度関係を赤色超巨星に適用することができる。

この手法によって10個の赤色超巨星の温度を決定したところ、例えばベテルギウスの温度は3611ケルビンだと分かった。この温度は、統計誤差が30~70ケルビン程度と十分に精度が高く、系統誤差も小さいと期待される。

赤色超巨星の進化を予測

2013年に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げたガイア衛星によって、2020年12月に公開されたばかりの高精度な恒星までの距離を活用することで、赤色超巨星の正確な明るさを推定することにも成功した。この研究で得られた赤色超巨星の温度と明るさはジュネーブ天文台の研究グループによる大質量星進化の理論モデルの予想とよく一致するものだった。

この手法を用いれば、今後さまざまな場所にある赤色超巨星の温度と明るさを簡単かつ正確に知ることができるようになる。例えば太陽よりも銀河の内側にある赤色超巨星は、太陽と比べて2倍以上の金属量を持つ。マゼラン銀河やアンドロメダ銀河、さんかく座銀河まで見渡せば、太陽と同程度以上から0.2倍程度まで、さまざまな金属量の赤色超巨星がある。これらの赤色超巨星を調べることで、大質量星がどのように赤色超巨星に進化し、超新星爆発を起こすのか、という重要な課題に対する手がかりを得ることができるものと期待される。

 

画像提供:東京大学

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