画像生成AI「Stable Diffusion」にみる、AI社会の未来

2022年は将来、歴史の転換点として認識されるようになるかもしれない。それは「Stable Diffusion」という画像生成AI(人工知能)がオープンソースで公開されたためだ。プロンプト(呪文)と呼ばれるテキストを入力するだけで、AIがテキストに関連した商用利用可能なオリジナル画像を自動で生成できる。

英スタートアップのStability AI社が8月下旬に公開して以降、瞬く間に利用が広がった。これだけの画像を自動生成できるソフトウェアであれば、従来なら開発企業が利用料を徴収するなどして提供するのが一般的だっただろう。しかし、同社はこのソフトウェアの利用料だけでなく、ソースコードも無償で一般公開し、誰でも無償で再利用・再配布することができるようにした。その結果、画像だけでなく音楽や動画もテキストを元に自動生成できるサービスなど、さまざまな自動生成AIが爆発的に増えているのだ。

2015年12月に野村総合研究所が、英オックスフォード大学との共同研究で、今後10~20年で日本の労働人口の約49%が就いている職業がAIやロボット等で代替できるようになる可能性が高いと発表した。その当時、AIやロボット等での代替可能性が低い職業として挙げられていたグラフィックデザイナーや作曲家、ミュージシャンといった領域も、自動生成AIに代替されていくのかもしれない。人間であれば1つの作品を作るのに数時間かかるところ、自動生成AIであれば数秒で生成できてしまうのだ。

もちろん、現段階では自動生成されたものは人間が作った作品に比べると不自然に感じる点があるかもしれない。しかし、コンピュータの機械学習の速度は非常に速いので、現時点での不自然さもすぐに解消されてしまうに違いない。そうなると、人間が作ったのかAIが自動生成したのかが問題ではなく、その作品がどれだけ人間に感動を与えるかどうかだけが判断の尺度になっていくだろう。

2005年にレイ・カーツワイル氏は、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点が来る」と予測した書籍『ポスト・ヒューマン誕生』を出版した。何をもって「知能」を定義するのかにもよるが、AIが人間並みの知能を備える日は思っていたよりも早いのかもしれない。

その近未来の社会で、AIと人間はどのように共存するか? 2015年の時点で定型的な仕事はAIに代替されると予測され、現時点で創造的とされている仕事もAIが代替できると予測されているが、人と人が直接的に相対する職業、例えば小学校教諭や理学療法士などはAIに代替できないのではないか。また、定型的な仕事や創造的な仕事でも完全にAIが代替するのではなく、人間の補助をAIで行う形で共存していくのではないだろうか。

(冒頭の画像は、Singularity AI Human near-futureをプロンプトに入れて自動生成したイラスト)