世界初、可視光エネルギーを用いてアンモニアを合成 東京大学など

世界初、可視光エネルギーを用いてアンモニアを合成 東京大学など

東京大学は2日、常温常圧の温和な反応条件下で、可視光エネルギーを用いて窒素ガスからアンモニアを合成することに世界で初めて成功したと発表した。再生可能エネルギーである可視光エネルギーをエネルギーキャリアとして期待されるアンモニアの形で貯蔵することが可能になる。

アンモニア(NH3)は取り扱いの容易さ、高いエネルギー密度、燃焼してもCO2を排出しない(ゼロエミッション)ことから、エネルギーを輸送・貯蔵する手段であるエネルギーキャリアとして有望視されている。しかし、現状のアンモニア合成法は、1910年代に確立されたハーバーーボッシュ法であり、これは高温・高圧(400-600℃、100-200気圧)の非常に厳しい条件を必要とする。また、大気中の窒素と反応させる水素ガスの製造に多量のCO2の排出を伴う上に多くのエネルギーが必要で、地球上で全人類が消費するエネルギーの数%を占めていると言われている。

東京大学、九州大学、大同大学の研究グループは、以前の研究でモリブデン錯体が常温常圧の温和な反応条件下で窒素をアンモニアに変換する極めて高活性な触媒として働くことを見出している。だが、この反応を進行させるためには還元剤として加えたヨウ化サマリウムの持つ化学エネルギーが必要だった。

今回、研究グループは、光触媒を用いて可視光エネルギーを利用できれば、化学エネルギーに依らないアンモニア合成ができるのではないかと考えて詳細な検討を行った。その結果、モリブデン触媒とイリジウム光酸化還元触媒を組合せて、窒素ガスと水素供与体としてのジヒドロアクリジンを可視光照射下で反応させることでアンモニア合成反応が進行することを発見した。窒素ガスとジヒドロアクリジンの反応は、生成するアンモニアより原料の持つ化学エネルギーの方が低いので、外部からエネルギーを与えない通常の熱反応では進行しない。しかし、光触媒が可視光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを用いて水素供与体であるジヒドロアクリジンを活性化することで、モリブデン触媒上でアンモニア生成反応が進行することが可能になった。

この研究により、再生可能エネルギーである可視光エネルギーを化学エネルギーの形でアンモニア中に蓄えることが可能であることが示された。再生可能エネルギーを用いてCO2を排出しない方法で生成された水素(グリーン水素)を原料としたグリーンアンモニアの開発につながる重要な指針として期待できるとしている。

窒素ガスからアンモニアを合成する手法

窒素ガスからアンモニアを合成する手法

アンモニア合成のエネルギー変化図

アンモニア合成のエネルギー変化図

画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)