漢字の手書きが文章作成力に影響を与えることが明らかに 京大

京都大学は同大学医学部の研究グループが、手書きの漢字習得が文章力の発達に独自の貢献をすることを明らかにしたことを427日に発表した。これにより、手書きに基づく読み書き教育が、高度な言語能力の発達のために有益であることが示唆された。

手書きからデジタルライティング(タイピングやフリック入力など)への転換によって、2006年と2016年の日本漢字能力検定(以下、漢検)の受検データを比較すると、10年間で成人の書字の力が特異的に低下したことが報告されている。これを受けて、学校教育におけるデジタル化が子どもの漢字習得に影響した場合、読み書き能力の発達への影響が懸念されている。

同研究グループは、20191011月または202012月の期間に、漢検と文章読解・作成能力検定(以下、文章検)の両方を受検した合計719名の中高生の成績データを用いて、漢字(読字・書字・意味理解)と文章(読解・作成)という2つの水準の読み書き能力の構造的関係性を調べた。その結果、読字の力が他の2つの漢字能力の基礎にあり、書字の力が文章作成能力に直接影響することが明らかになった。

一方で、 意味理解の力は文章読解力に影響することで間接的に文章作成に寄与するという、読み書き発達の二重経路モデルが支持された。これは、漢字の書字には文章作成能力に対する独自の影響力があり、これを意味理解で代替することはできないことを意味する。

 

読字から文章力に至る読み書き発達の二重経路モデル

なお「文章作成能力」は、文章検3級の審査基準では、意見文を作成できることや日常で必要とされる通信文を与えられた条件のもとで書けることとされている。また「文章読解力」は、段落や文章の要旨、筆者の意図を理解できることとされている。

この研究結果は、4月24日に国際学術誌『Reading and Writing』にオンライン掲載された。早期のデジタルデバイスの利用が子どもの漢字の手書き習得に抑制的な影響を及ぼした場合、その影響が文章力の発達にまで及ぶ可能性を示している。同研究グループは、読み書き教育におけるデバイスの導入については、その目的や適切な利用方法、効果検証の方法などについて注意深く議論していく必要があるとしている。

画像提供:京都大学