空気中の水蒸気を効率よく水に換える吸湿材を開発 大阪公立大
大阪公立大学の研究チームは、医薬品や化粧品などにも使われる高分子を用いた新しい吸湿剤を開発した。この吸湿剤は、空気中の水分を効率よく吸収・放出できる。従来の吸湿剤では、吸収した水を取り出すのに約100℃まで加熱する必要があったが、この吸湿剤では35℃で取り出すことが可能だという。従来よりも少ないエネルギーで水分を放出できるため、乾燥地帯など水不足が深刻な地域での応用が期待される。10月29日に国際学術誌「ACS ES&T Water」のオンライン速報版に掲載された。
人口増加や温暖化などの影響で、世界中で水不足が深刻化している。地球上の水の約97.5%は海水であり、生活に利用できる淡水はごくわずかだ。海水の淡水化技術は研究が進んでいるが、砂漠などの海から離れた内陸部では活用しにくい。そこで、新たな水源として空気中の水蒸気が注目されている。しかし従来の方法では高い湿度が必要で、乾燥地帯での利用には向いていなかった。このため、どのような気候条件でも効率的に水分を吸収・放出できる新しい吸湿剤が求められていた。
今回、ポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)という異なる性質を持つ高分子をランダムに結びつけた新しい吸湿剤を開発した。この吸湿剤は、空気中の水分を吸収しやすく、かつ放出も簡単に行える。また、PEGとPPGの特性の組み合わせにより、35℃という低温でも水を取り出すことができ、エネルギー消費を抑えることができた。
将来的には、この新しい吸湿剤をデバイスに組み込むことで、砂漠などの乾燥地帯やエネルギー資源の乏しい場所での持続可能な水供給が可能となることも期待される。また、災害時や緊急時における水分確保の手段としても役立つ可能性がある。この技術の応用により、温室効果ガスの削減や水資源の効率的な利用にも繋がることが考えられる。今後は実用化に向けて、吸湿剤の改良やシステム全体の効率化を目指していくという。
画像提供:大阪公立大(冒頭の写真はイメージ)