海水温の上昇で白化したサンゴの回復に異種間交雑が貢献 琉球大

サンゴの大規模白化後の回復に異種間交雑が貢献 琉球大

琉球大学は10日、1998年の大規模白化後に回復した沖縄のサンゴにおいて、異種間交雑が発生しそれが遺伝的多様性を高め、環境変化への適応力に貢献した可能性があると発表した。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

サンゴの白化は、高い水温に長くさらされたサンゴが強いストレスにより、色が白くなって衰弱する現象。白化したサンゴは海水温が下がれば回復するが、海水温が高い状態が続き、繰り返し白化すると死滅してしまう。地球温暖化による海水温の上昇によって世界的に頻繁に起こるようなり、沖縄では1998年に記録的な大規模白化が発生し、特にミドリイシ属サンゴの多くが死滅した。

研究グループは、大規模白化後の20年以上に渡って瀬底島周辺のサンゴ群集を観察し、サンゴ群集が部分的な回復傾向にあることを確認した。しかし、この間にも沿岸海域の海水表面温度は緩やかに上昇を続けており、白化のリスクを示す指標である週積算高水温も高まる傾向にある。依然として白化リスクが存在する中で、サンゴ群集がこのように回復できた理由がわからなかった。

研究グループは、1998年の大規模白化以降に回復したとみられる3種類のミドリイシ属サンゴについて分析し、これらが異なる種同士のサンゴが交雑していた雑種であることを確認した。雑種とされたサンゴは親種とは異なる形体を持つが、親種と交配することは可能だった。さらに遺伝子の混ざり具合を調べる統計解析によって、異なる種の間で遺伝子をやり取りする遺伝子浸透が起きていることがわかった。この遺伝子浸透によって、暑さに強い遺伝子が別の種に導入されていく可能性がある。

この研究により、水温上昇などの環境ストレスの増大、大規模白化による群体数の減少、それに伴う生息地域内の繁殖相手の減少という負のイベントに対して、異種間で交雑することが「生き残るための戦略」として機能していた可能性が示された。今後は、交雑によって取り込まれた遺伝子がどのような働きを持つのかを調べるとともに、他の地域のサンゴ群集でも同様の現象が起きているのかを比較することで、交雑が普遍的な適応戦略かどうかを検証していくとしている。

写真提供:琉球大学(冒頭の写真はイメージ)