韓国で広がるMERS 日本でとるべき対策は?(1)

 韓国で拡大している中東呼吸器症候群(MERS)。時間を追うごとに深刻化し、感染者は15日時点で合計150人に増加した。感染力が強まったいわゆる変種ウイルスではないとされているが、隔離対象者は5000人を超えており、朝鮮日報によると「免疫力が弱い病院の患者に主に広がり、伝播力が高くなっている」という。隣の国で起こっている問題だが、日本において水際で防ぐためにできることは何だろうか。

 MERSは「MERSコロナウイルス」を原因とするウイルス性の感染症で、症状は発熱、咳、悪寒、喉の痛み、筋肉痛や関節痛、呼吸困難と続き、肺炎に進行し、下痢などの消化器症状を伴う場合もある。ヒトからヒトへも感染するが、季節性インフルエンザのように次々と感染することはないとされている。潜伏期間は2~14日で、感染しても症状が現れない人もいるが、高齢者や糖尿病、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があるという。現在、MERSに対するワクチンや治療法はなく、患者の症状に応じた対症療法となる。

 日本での感染者はまだいないが、現在はどのような対策をとっているのだろうか。空港等の検疫所では、MERS発生国からの入国者・帰国者が感染している疑いがある場合、MERSウイルスの検査や健康監視をしている。しかし、潜伏期間が最大14日程度と長いため、帰国後の体調変化にも注意が必要だ。

 厚労省は1月21日、感染症法において患者全数を報告の対象とし、指定医療機関への入院を勧告する「二類感染症」に指定しており、今後、国内でMERS患者が発生した場合には、医師による患者の届出や患者に対する適切な医療の提供が行われることになる。

 また同省は6月1、10日に各自治体に向けて、院内感染対策の徹底や感染が疑われる患者の迅速な情報共有をすることなど、周知・協力の通知をした。感染した疑いのある患者が見つかった場合、検査を迅速に実施し、感染の有無を確認できるよう、全国の自治体と検疫所にMERSウイルス検査のための試薬を配布するなどして、検査体制を整備している。

(市街地の写真:ソウル市内 6月12日撮影)