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太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る 

青森県五所川原市金木。ここには文豪・太宰治の生家「斜陽館」がある。観光名所となっているので、訪れる人は多いが、程近いところにひっそりと佇む「旧津島家の離れ」を知っている人はあまりいない。

1922(大正11)年、太宰治の兄・津島文治夫婦の新居として建てられた津島家の離れは、斜陽館と同じ和洋折衷の重厚な建物であったが、現在の場所へ曳家ひきや移転し、津島家が手放したあとは2度所有者が変わり、現在の所有者が2007年秋から太宰治が疎開した家として一般公開を始めた。

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る
津島家 新座敷

ここを訪れると、太宰治の考証に詳しい案内人が、ぼろぼろになるまで読み込まれた作品「故郷」の文庫本を手にしながら、太宰治の世間的評価に対して別の側面から考えさせられるエピソードを、作品や建物を通して静かに熱く語ってくれた。世間的な評価とその実像との差異を知るにつれ、太宰治の作品を再び読みたくなる衝動に駆られる。

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る
太宰治が執筆した部屋

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る
洋室

疎開した太宰治が妻子と暮らしたこの家は、文豪デビュー後に住まいとしていた建物としては唯一現存する貴重な建物だ。この居室で、太宰治は「パンドラのはこ」「苦悩の年鑑」「親友交歓」「冬の花火」「トカトントン」など23もの作品を執筆した。

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る
太宰治が執筆した机

太宰治が執筆した部屋「津島家新座敷」に座る
太宰治が執筆した机

太宰治が執筆した机の前に座ってみた。すると、太宰治の作品に向かう意欲と覚悟のようなものが伝わってきた。家族と一緒に暮らしながら、精力的に執筆できたこの時が一番幸せな時期だったのではないか、と話してくれた案内人の言葉を実感した。ここは一人か二人くらいで静かに訪れてみてほしい。

「選ばれてあることの恍惚と不安と二つわれにあり」

太宰治が生前もっとも好んで口にした言葉は、フランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌのこの一節だと言われている。

【施設情報】
津島家新座敷
青森県五所川原市金木町朝日山317-9
TEL:0173-52-3063
開館時間:9:00~17:00(不定休)
入館料:500円

 
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