マインドフルネスが高い人は、収入によらず幸福感が高い

マインドフルネスが高い人は、収入によらず幸福感が高い

広島大学の杉浦義典准教授は、「マインドフルネス」の傾向が高い人は、収入の多い少ないによらず幸福感が高いことを明らかにした。また、こうした人の特徴として、自分の体験を批判的に見ないことや、自分の体験を言葉にあらわすのが得意であることを見いだした。研究成果はスイス科学誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー」オンライン版に13日に掲載された。
 

収入と幸福感の関連性の不思議

一般に、収入の多い人の方が幸福感も高い傾向があると多くの研究で言われている。しかし一方で、実際に収入と幸福感の関連の強さを調べると、あまり関連は強くないことも示されているという。研究チームは、このように一般的な傾向に反して関連そのものは強くない要因として、「収入によらず幸せを感じている人(収入が幸福感に影響しない人)」がある程度いるために、集計の際に関連度合いにばらつきが生じていると仮説を立てた。さらに、その違いが「マインドフルネスの傾向」の違いではないかと考えた。

マインドフルネスの傾向が高い人は、その瞬間瞬間に起きていることに丁寧に注意を向けているなどの特徴がある。例えば、食事の時もスマートフォンを見ながらかきこむのではなく、じっくり五感を使って味わうような人や、他人と比べて引け目を感じるような時にも、一時の思いに振り回されず、自分と他人それぞれの存在価値を認めて平穏な気持ちを保つことができるような人を指す。
 

マインドフルネス傾向の高い人は常に幸福感が高い

研究チームは今回、20~60歳の社会人800人を対象に、年収、幸福感、マインドフルネスについて調査。そのうち、年収について回答の得られた734人を対象に、マインドフルネスの傾向の高い人と低い人の違いを分析した。すると、マインドフルネスの傾向が低い人は収入の多い人の方が幸福感も高いという従来通りの結果だったが、高い人は収入の多少に関係なく常に幸福感が高いことが分かった。

さらに、こうした人の特徴は2種類あることも分かった。一つ目は、自分の体験を批判的に見ないこと、もう一つは、自分の体験を言葉で表現するのが得意なことだった。

例えば、「自分の体験を批判的に見ない人」は、他人との優劣にこだわらずに自分を大切にできる。自分よりも収入の多い人に引け目を感じなれば、安定した気持ちで過ごすことができ、幸福感も高くなる。また、「自分の体験を言葉で表現するのが得意な人」は、一瞬一瞬の体験を丁寧に見つめており、例えばお菓子を食べる時、他のことを考えながら口に放り込むのではなく、じっくり味わい充実感を得る、といった特徴がある。
 

幸福感は生活スタイルも影響?

今回は収入と幸福感の関連調査だが、研究チームは今後、収入と関連の深い要素として、倹約やシンプルライフといった「生活スタイル」と幸福感の関連をさらに調べることで、幸せな生活スタイルが見いだせる可能性を示唆。また、マインドフルネスはトレーニングで高めることも可能なため、生活スタイルの見直しとマインドフルネスのトレーニングを組み合わせることで、幸福に至るための道筋を見つけられるかもしれない、としている。

(写真はイメージ)