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ヒトの見方も少し優しくなれる『ざんねんないきもの事典』

シリーズ累計430万部を突破した人気児童書「おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典」。シリーズ第1弾となる本書は、動物学者の今泉忠明氏が監修した児童書で、イラストを用いながら、よく知る動物たちの、あまり知られていない「ちょっと残念な進化」をユーモラスに描いています。

例えば、大きな口で野生動物を丸ごと食べてしまうなど、凶暴なイメージのあるワニ。本書では、「ワニが口を開く力は、おじいちゃんの握力に負ける」と紹介されています。動物の中で最も噛む力が強いと言われているのが、体長6m以上にもなる「イリエワニ」です。このワニは口に小型トラック程度の重さのものをかけられるので、大抵のものは噛み砕いてしまいます。しかしその反面、口を開ける力は約30kgと弱く、口先を握り込むと抑え込めてしまうそうです。

ニュージーランドに生息する体長60cm、体重4kgの鳥類のカカポは、「太りすぎて飛べなくなった」と紹介されています。カカポの祖先は約100万年もの間、天敵がいなかったことで、果物など豊富な食べ物に恵まれました。それにより体は巨大化し、飛ぶための筋肉は退化して、代わりについたのが脂肪でした。ところが、近年、人間が持ち込んだネコなどがカカポを襲うようになりました。逃げる術の無いカカポは、今では絶滅の危機に瀕しています。

大きな体と迫力満点のゴリラですが、本書では「知能が発達し過ぎて、お腹が弱い」とあります。ゴリラは知能が高いことから、争って怪我をする危険がある場合、多少の怒りは我慢してしまいます。そのため、ストレスが溜まると脇の下が臭くなったり人間と同じように急に下痢になったりするそうです。ゴリラは、そのいかつい見た目とは裏腹に、とても繊細な性質なのです。

この他にも、本書には「キツツキは、頭にクルマが衝突したくらいの衝撃を受けている」「カメムシは自分のニオイがキツ過ぎて、気絶する」「チーターはスピードに特化し過ぎて、肉食動物なのに超弱い」など、122種の動物が紹介されています。

長い進化の過程を経て、「ざんねん」な特徴を持つことになった動物たちを描く本書。しかしながらヒトも動物の一つですから、彼らの側から見たら、何かしら「ざんねん」な進化を遂げていると言えるでしょう。厳しい環境変化を生き抜くため、「ざんねん」な個性と共に、ひたむきに生きる動物たちの姿は、どこか現代社会を生きる人間にも重なります。それぞれの動物の新たな一面に気付くだけでなく、ヒトの見方も少し優しくなれるような1冊です。

『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』
監修:今泉忠明
発行日:2016年5月21日
発行:高橋書店

(冒頭の写真はイメージ)