アイガモをヒントにした自動抑草ロボットで水稲収量増 農研機構など

農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)と東京農工大学は23日、水田の有機栽培においてのアイガモ農法をヒントに開発した、自動抑草ロボット「アイガモロボ」の実証実験を行ったことを発表した。このロボットの導入により、雑草の発生量が水稲の収量に影響を及ぼさない程度に抑えられることが確認できた。この研究成果は日本作物学会誌に発表された。

国内では環境保全や農産物の安心・安全に対する関心が高まり、有機農産物に対する需要が増加すると考えられている。2021年には農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、有機農業取組面積の拡大を目指しているが、有機栽培の普及は十分に進んでいない。水稲有機栽培では除草作業のための作業時間と作業負荷が非常に大きく、省力的かつ安定的な雑草防除技術の開発が求められている。

農研機構、有機米デザイン、東京農工大学、井関農機の研究グループは、アイガモ農法から着想を得て、効果が不安定なアイガモの代替として自動抑草ロボット「アイガモロボ」を開発した。アイガモロボは重量約16kgで、田んぼの水に浮かべて搭載した全地球測位システム(GPS)によって自動走行させる。動力源はソーラーパネル。水稲移植直後から3週間程度使用する。スクリューによって地表面の土を巻き上げて濁らせることで雑草の光合成を阻害すること、地表面に堆積させた土で雑草の種子を埋設することで雑草の発生と生育を抑制する。

実証実験は2カ年計36カ所(秋田・鹿児島)で行った。アイガモロボの導入により水稲平均収量は10%増加し、除草回数は平均2.4回から1.0回と58%減少した。これらのことより、アイガモロボは除草労力を削減しつつ水稲の収量を確保する新たな雑草対策ツールとして有効だと考えられる。

今後は、アイガモロボのさらに詳細な雑草抑制メカニズムや水稲収量の増加に寄与した要因の解明を進め、抑草効果をより改善していくという。アイガモロボが水田で安定的に稼働し高い抑草効果を発揮することで、水稲有機栽培における除草作業の軽労化が進展することから、水稲有機栽培面積の拡大に貢献できるとしている。

水田で稼働中のアイガモロボ

画像提供:東京農工大学(冒頭の写真はイメージ)