2つのアジア大学ランキング、東大は1位? 12位?「国際性」がカギ

英国の高等教育情報誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)と大学評価機関クアクアレリ・シモンズ社(QS)が、いずれも10日にアジアの大学ランキングを発表した。両ランキングでの東京大学の順位を見ると、THEでは1位、QSでは12位となり、異なる結果となった。これは2つのランキングにおける「国際性」の配分が異なるためであり、アジアトップクラスの大学と比較して東大の国際性は低いと評価されているようだ。また、日本が低迷し、中国が台頭している様子も伺えた。これも「国際性」の評価が原因なのだろうか。

アジアのトップ大学は?

まずランキングの結果を見てみよう。昨年までの結果と比較すると、東大はTHEでは首位を維持する形となったが、QSでは初めて上位10位から外れた。また日本の大学は軒並み順位を落とした。100位以内に入った日本の大学はTHEでは昨年の20校から19校に減り、QSでは21校から16校に減った。反面、中国の大学が台頭し、100位以内に入った大学数がTHEでは昨年の18校から21校に増えて初めて日本を抜き、QSでは22校から25校に増えた。

THEのランキング上位20位

2015年順位 2014年順位 大学名 国/地域 2015年点数
1 1 東京大学 日本 76.1
2 2 シンガポール国立大学(NUS) シンガポール 73.3
3 3 香港大学 香港 67.5
4 5 北京大学 中国 65.2
5 6 清華大学 中国 65.1
6 4 ソウル大学校 韓国 64.8
7 9 香港科技大学 香港 64.7
8 8 韓国科学技術院(KAIST) 韓国 64.5
9 7 京都大学 日本 62.8
10 11 南洋理工大学 シンガポール 62.2
11 10 浦項ポハン工科大学校 韓国 61.1
12 29 中東工科大学 トルコ 56.6
13 12 香港中文大学 香港 52.4
14 19 ボアズィチ大学 トルコ 51.1
15 13 東京工業大学 日本 50.9
16 27 成均館ソンギュングァン大学校 韓国 50.2
17 14 国立台湾大学 台湾 49.3
18 15 大阪大学 日本 49.1
19 24 イスタンブル工科大学 トルコ 48.1
19 16 東北大学 日本 48.1

 

QSのランキング上位20位

2015年順位 2014年順位 大学名 国/地域 2015年点数
1 1 シンガポール国立大学(NUS) シンガポール 100.0
2 3 香港大学 香港 99.3
3 2 韓国科学技術院(KAIST) 韓国 99.0
4 7 南洋理工大学 シンガポール 98.6
5 5 香港科技大学 香港 98.0
6 6 香港中文大学 香港 97.7
7 8 北京大学 中国 97.6
8 4 ソウル大学校 韓国 97.5
9 11 香港城市大学 香港 97.3
10 9 浦項工科大学校 韓国 96.5
11 14 清華大学 中国 95.0
12 10 東京大学 日本 94.9
13 13 大阪大学 日本 94.7
14 12 京都大学 日本 94.3
15 15 東京工業大学 日本 94.2
16 22 復旦大学 中国 94.1
17 17 成均館大学校 韓国 93.9
18 16 延世ヨンセ大学校 韓国 93.1
19 18 高麗大学校 韓国 92.9
20 18 東北大学 日本 92.3

 

「国際性」の配分に違い

東大の順位がTHEでは1位、QSでは12位となったが、この相違を生んだ評価方法の違いは何だろうか。

まず、点数配分が大きい評価項目を見ると、どちらのランキングにも共通しているのが「教員と学生の比率」「論文引用数」「教員あたりの論文数」といった項目だ。特に「研究者による評価」という項目の評価配分はどちらも3割を占め、最も大きい配分になっている。しかし、これらの項目では、QSの評価でも「研究者による評価」では東大は100点満点となっているため、ここで順位が分かれたのではなさそうだ。

では原因はどこだろうか。内訳を詳しく見てみると、分かれ目となったのは「国際面」の評価と見られ、東大はいずれのランキングでも点数が低かった。特にQSランキングでは国際面の配分を大きくしていたため、10位以内から外れるという結果になってしまったようだ。東大のTHEでの「国際性」の得点は、100点満点中32.4点であり、これは総合上位30位までの大学の中で24位となる点数だ。QSでは、「外国人教員比率」が46.9点、「留学生比率」が62.9点、「交換留学生受け入れ比率」が7.6点、「交換留学生送り出し比率」が7.9点(いずれも100点満点中)となった。なんと、交換留学に関しては10点を下回ってしまったのである。

QSランキングで10位以内に入ったシンガポール国立大学(NUS)と香港大学の2校は、国際方面の前述の4項目ですべて90点以上を取っている。なお、QSランキング総合3位のKAIST(韓国・大田テジョンに本部を置く大学)は、国際面での評価はこの2校に及ばなかったが、「教員一人あたり論文数」で97.4点という高得点を取ったことが、上位ランクインに大きく貢献した。(1位NUSは65.6点、2位香港大は66.9点。)

日本の大学は国際性が下がったのか

「国際性」の点数を比較すると、昨年から日本の大学が落ち込み、中国の大学が台頭してきたことも、「国際性」の評価が低かったせいではないかと考えられてしまうが、はたしてそうだろうか。

実際のところ、「日本の大学は全体的に既存の名声に依存しすぎており、国外の学生と教員を相当数集めることができなかった」「中国人は国際レベルで競争しようという野心があり、莫大な投資と積極的な政策を行ってきた」と、米・コロンビア大学とフランスの大学との提携の理事であるアレシア・ルフェビュール氏はTHEのランキングについて分析している。

しかしよく見てみると、むしろ日本の大学は国際面で進展していることが分かる。THEランキングで100位以内に入った日本の19大学のうち、東大を含めた16校は「国際性」の点数が昨年の結果より上がっており、中国では北京大を含め、昨年ランクインした18大学中5校で「国際性」の点数が下がっているのだ。さらに、QSランキングで、昨年と順位が入れ替わった東大と清華大を比べてみると、国際面を表す4項目の合計は、東大は17.8点上がっているのに対し、清華大は7点下がっていた。つまり、ランキングの順位が全体的に下がったことの原因は国際性ではなく、日本の大学の相対的な質が、総合的に下がってきているということである。

日本の大学が国際性の面で弱いことは事実だ。しかし、点数に現れているように「国際化」は現在進展している過程にあるといえる。現在の努力が報われるのに数年はかかるだろうが、引き続き努力しつつ、他に総合的な評価に影響している要因は何か、より根本的に問題を捉えていくことが必要である。

参考記事
QSアジア大学ランキング、東大13位にダウン 国際性がネック(2016/06/19)
世界大学評判ランキング 東大は12位 アジアが躍進(2016/05/11)