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経済学賞に米大学の2氏 オークション理論の研究が結実

【ノーベル賞2020】経済学賞に米大学の2氏 「電波オークション」の確立に貢献

スウェーデン王立科学アカデミーは今月12日、2020年の「The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel」(アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)を、米国スタンフォード大学のポールR.ミルグロムとロバートB.ウィルソンの2氏に授与することを発表した。

経済学賞に米大学の2氏 オークション理論の研究が結実

賞委員会の議長であるピーター・フレドリクソンは授賞理由として、「オークションの研究の基礎理論が実用化され世界中に広まり、その発見が社会に大きな利益をもたらした」と語っている。

オークションには長い歴史がある。古代ローマではオークションを利用して担保資産の売却をしていたし、世界最古のオークションハウスは1674年に設立された。今日ではアートのオークション、不動産売買、排出権取引、公共事業の入札のみならず、個々人もインターネットで様々なオークションを利用しており、より一般的かつ複雑化している。

オークションの価格は「財」の価値の主観的なとらえ方によって決まるが、高すぎる価格を提示して勝つことはかえって損失となり、「勝者の呪い」といわれる。

1996年にノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・ヴィックリーは、オークション理論を確立した。ヴィックリー氏は、3種類の主な入札方式(価格競り上げのイングリッシュ・オークション、価格を引き下げていくダッチ・オークション、封印入札方式)を検証したうえで、第二価格入札(ヴィックリー・オークション)と呼ばれる新しい方式を提案した。これは、封印入札で、落札者の価格を2番目の価格に1ドル上乗せした価格とすることで、競り上げ方式と同じ効果を得させる方式だが、あまり実用化にはつながらなかった。

今回受賞したウィルソン氏は、共通の価値を持つ「財」のオークション理論を定型化した。一方のミルグロム氏は、一般的な価値だけではなく入札者ごとに異なる価値を認めるオークション理論を策定した。入札者が入札中に互いの推定価格について詳しく知ると、売り手がより高い期待収益を得ることができることを示した。1994年、米連邦通信委員会による携帯電話の電波利用権の入札の際に、両氏の理論をもとにした「電波オークション」が用いられた。電波の周波数は地域や帯域によって様々な種類があり複雑であるが、入札を同時に始めすべての入札が終わるまで続けられ、乗り換えも可能とすることで、多くの周波数と買い手から最適な組み合わせを見つけられるようになった。この方式は手続きの透明性や効率性を高めるとして、世界各国で採用されている。

経済学賞に米大学の2氏 オークション理論の研究が結実

ノーベル経済学賞は、唯一日本人の受賞者がでていない。毎年候補として名前があげられる米プリンストン大教授の清滝信宏氏は、日本のバブル崩壊などを説明する土地や住宅の資産価値の下落が不況につながる理論を研究し、米国や日本の金融緩和策などに影響を与えてきた。

1969年から始まったノーベル経済学賞は、マクロ経済学やミクロ経済学、数学的な理論やゲーム理論、実践経済学などの分野に授与されてきた。この賞を通して、日常の周辺にある経済のメカニズムや自分の生活に繋がる仕組みを、改めて深く考える機会になればと思う。

(冒頭の写真はイメージ)