海草繁茂に関わる共生細菌群の因果関係を明らかに 理研・北里大学

理化学研究所と北里大学は12日、海草アマモの繁茂に関わる成長特性の評価指標を見いだすことに成功したと発表した。これにより、海洋生態系と地球環境を保全するためのブルーカーボン(海洋炭素)に貢献する技術開発に重要な視点を提供すると考えられる。

ブルーカーボンは、海洋生態系の生物活動により固定される炭素の総称。海草は、海洋におけるCO2吸収源として有望視されており、海草とその底泥による温室効果ガスの発生抑制効果は森林土壌の約40倍に上ることが試算されている。また、海草は溶存酸素の供給や産卵場所、魚自体の餌場など以外にも細菌性病原体の減少や海洋酸性化の抑制などにも関わり、生態系の健全性と地球環境全体の保全の観点から重要視されている。しかし、近年は海草の死滅が世界的に散見されており、海草の効率的な栽培方法が世界中で検討されている。

理化学研究所と北里大学の研究グループは、海草の繁茂している地域を対象として、海草の成長特性の評価指標を見いだすことを試みた。研究グループは、九州の豊後水道沿い(大分県佐伯市)の海域を対象として、疫学的な地理的評価を機械学習で解析し、海草の繁茂に関する地理的特性を見いだした。その結果、通常は沿岸に近い海域では海草が生えにくいにも関わらず、魚の陸上養殖施設の沿岸で例外的に海草が生えている場所が確認された。

この養殖施設周辺の底泥の生物学的・物理化学的評価を行った結果、海草の繁茂が見られた底泥では二酸化炭素の貯留量が増加し、亜鉛の含有量は減少傾向にあった。生息する貝類の種類も多く生物多様性が増大していた。そして、海草の底泥に生息する共生細菌群に特有な傾向が見られ、これが海草の成長特性の評価指標になることがわかった。

海草の繁茂に関わる共生細菌群が成立した原因については、陸上養殖施設で使用されている発酵飼料ではないかと推測している。これは地産地消の形で地元の食品加工場から出る新鮮な非食用海産資源を原材料として発酵飼料化しているもの。養殖魚の肉質によい影響を与えていることが既に知られており、腸内細菌叢の変化という形でつながっている可能性がある。

今後は海草繁茂の過程を明らかにし、普遍的に海草を繁茂させる技術を確立していく。漁業者の持続的な水産資源管理への貢献が期待でき、海を守りながら経済活動を行うブルーエコノミー社会の構築につながることが期待できるとしている。

画像提供:北里大学(冒頭の写真はイメージ)

 

参考記事

海藻類のCO2固定能力の試算に成功 長崎大・琉球大・理研(2022.05.30)