国内初、トリュフの人工栽培に成功 森林研究・整備機構

国内初、トリュフの人工栽培に成功 森林研究・整備機構

森林研究・整備機構は9日、西洋料理の高級食材のきのこである白トリュフ、ホンセイヨウショウロを国産としては初めて人工的に発生させることに成功したと発表した。栽培技術を確立することにより、新たな食材として安定供給を可能にするとともに、その風味を活かした加工品の開発など新たな産業の創出が期待できる。

トリュフは西洋料理に欠かせない高級食材となるきのこで、その芳醇な香りを楽しむもの。イタリア、スペイン、フランスなどが有名な産地で、国内で流通するトリュフは全てが海外からの輸入によるもの。産地によってその価格は異なるが、キログラム当たり約8万円で輸入されており、きのこの中で最も高額に取引されている。

日本でも20種以上のトリュフが自生し、その中には食材として期待のできる種も存在するが、野生のトリュフは希少で人工栽培技術は確立されていなかった。森林研究・整備機構森林総合研究所を中核とする研究グループは、2015年から国産トリュフの栽培化を目標として研究を行ってきた。

トリュフは生きた樹木の根に共生して増殖する菌根菌と呼ばれる菌類に属している。菌根菌は樹木の根に共生し樹木から光合成産物を獲得する。反対に、菌根菌は土壌中に栄養菌糸を拡げて、養水分を効率的に集めて樹木に供給する。菌根菌はこのように樹木との共生関係を成立させて増殖していく。人工的にこれらの菌糸の集合体である子実体(きのこ)を発生させるには、樹木との共生関係を明らかにして、それを再現しないといけない。海外では樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽することでトリュフの栽培が行われてきている。

研究グループは国内のトリュフの自然発生地で調査を進めて、トリュフの生育に適した樹種や土壌環境を解明、それらの条件を再現して国産種のトリュフを発生させることを目指した。国産白トリュフであるホンセイヨウショウロを共生させたコナラ苗木を、国内各地の4つの試験地に植えて栽培管理を行って、その結果、茨城県内の試験地および京都府内の試験地にて、2022年11月にそれぞれ8個および14個の子実体の発生を確認した。

菌根菌の増殖様式
菌根菌の増殖様式

ホンセイヨウショウロは、大きさは10cm以上にもなる場合もあり、欧米の白トリュフ同様の香りがすることから、新たな食材としての価値が期待される。栽培技術が確立されれば、国産トリュフが広く安定的に提供されて大きな市場を生むことが考えられる。今後はトリュフの安定的な発生に適した栽培条件を明らかにするとともに、栽培から収穫に至るまでの作業工程を検討して実用化に向けた研究を進めていくとのこと。

画像提供:森林研究・整備機構(冒頭の写真はイメージ)