海水から水素を製造 高耐久性の合金電極を開発 筑波大など

筑波大学、名古屋大学、高知工科大学は14日、海水を直接電気分解して水素を製造する低コストで高耐久性を持つ合金電極を開発したと発表した。淡水を使用せず海水を直接電気分解する技術は、再生可能エネルギーが豊富な場所での水素製造促進に貢献すると考えられる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能な水素はCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして着目されている。水素は通常は、淡水から精製した純水を電解して得られる。しかし、地球上で利用できる淡水には限りがあり、水素製造のために大量に淡水を消費するのは問題がある。その一方で、無尽蔵な海水については、立地的に太陽光や風力を用いた再生可能エネルギーを豊富に用いることができる。

また、海水の電解には従来は酸化白金、酸化ルテニウム、酸化イリジウムなどの貴金属電極を陽極として用いてきたが、コストが大きい。一方、コストが低い卑金属電極は、塩化物イオンと電気化学反応を起こし、電極自身が塩化されつつ塩素ガスや次亜塩素酸を発生させるため、寿命が非常に短いという問題がある。

そこで研究グループは、9つの卑金属元素(Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、Mo)が均一に混じり合った高エントロピー合金を作成した。高エントロピー合金は、特に5種類以上の元素を等濃度に近い割合で混合した合金のこと。金属元素が完全にランダムに分布して強固な結合を持つことで機械強度が劇的に向上するとともに、化学反応に対する安定性に優れることが知られている。その合金を板状に加工して陽極として用いた。

この電極を用いて塩水の電気分解試験を行ったところ、6000回のON/OFFで90%以上の性能を保持し、太陽光発電利用時に換算した10年間(1日1回ON/OFF)では電解性能の劣化をほぼ起こさないことがわかった。耐久性には優れるが、酸化イリジウム電極との性能の比較ではエネルギー効率に改善の余地があった。

水電解装置における電源の ON/OFF を模擬した電流電位における加速劣化試験

合金電極を用いた海水電気分解は、再生可能エネルギーが豊富な場所での水素製造に貢献できると期待される。今後は合金電極の高耐久性のメカニズムをさらに解明するとともに、触媒性能の向上を図るとしている。

画像提供:筑波大学(冒頭の写真はイメージ)