福祉国家スウェーデンの認知高齢者ケア 45%が一人暮らしを継続

自分の家族や身近な人が、認知症になった場合、当事者としてどんな方法で認知症家族の介助ができるだろうか。同居しながら、デイサービスなどを利用しながら直接介護にあたるのか、あるいはケア付きの介護施設に入居してもらうのか、家族が遠方に居る場合はどうするのかなど、さまざまに考えるだろう。

福祉国家として名高いスウェーデンでは、認知症高齢者の45%が一人暮らしを継続しているという。また、寝たきりは皆無で、大半は自宅で普通に暮らせている。スウェーデンの地方都市の高齢者ケアの現場を取材、研究した医療福祉ジャーナリズム学博士・藤原瑠美さんの講演「スウェーデンのケアの概念としてのオムソーリ」によると、その秘訣は「アンダーナース」と呼ばれる介護スタッフが実践している「オムソーリ・ケア」にあるという。

ウェルクス(東京都墨田区)の運営する認知症の情報WEbマガジン「認知症ONLINE」で公開されている藤原さんの講演内容によると、オムソーリとはスウェーデンに古くからあった言葉で「悲しみや幸せを分かち合う」という意味をもつ言葉。アンダーナースは高齢者が抱いている喪失感に共感しながら、いたわるケアを行うことで、高齢者の自立心を育て、症状の悪化を防ぐことに寄与している。アンダーナースは一日わずか15分間という短い時間で必要充分なホームヘルプケアを行う。その一例をみると、投薬の介助→ベッドメイキング→高齢者が調理するのを見届ける→やかんでの湯沸し→トイレ掃除→目覚まし時計を一緒にセットする→デイケアの送迎時間の確認→ゴミ出しなどだ。しかも気ぜわしさを感じさせずにこれらのケアをしながら常に会話を絶やさないように心掛けているという。藤原さんによると、これだけの短時間で効率良く充分なケアができる理由は、アンダーナースの業務から掃除と洗濯を切り離し、別のサービスチームの業務としたことと、食事に真空パックの調理食を導入したことなどが大きいとしている。

スウェーデンは、1972年に世界でいち早く高齢社会を迎え、高齢者ケアの主軸を「医療中心」から「福祉中心」に転換した。認知症ケアの為の国の経費も85%を福祉ケアが占め、医療はわずか5%だ。病院の数も極限まで減らしているという。

25%という高い消費税率にも表れているように、スウェーデンは高福祉高負担国家と言われている。財務省が公開している、2012年度OECD諸国の国民所得に対する租税負担率と社会保障負担率の合計は、スウェーデンでは56.1%で、日本は40.5%。国民負担率も制度も異なるため、単純比較はできないのだが、日本ではどうだろうか。

日本では厚生労働省が、今年度から認知症の人や家族などが集まる「認知症カフェ」で「認とも」と呼ばれているボランティアが認知症の人の自宅を訪問する事業に取り組み始めている。2014年度には全国655カ所での運営実績もある。「認とも」は基礎的な講座を受けた「認知症サポーター」や学生、住民、また地域貢献したい元気な高齢者が務める。厚労省は自宅訪問する市区町村に対し、16年度予算案では活動費26億円を計上した。

藤原さんによると、2035年、日本は団塊世代が85歳を超えようとしており、85歳を超えると急激に認知症の発生率が高まるという。日本も認知症を悪化させないケアシステムの開発と、介護職に携わるスタッフの地位向上を本格的に進めることが必要な時期に来ている。
 

(写真はイメージ)

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