【解説】新・学習指導要領

2020年から順次適用される学習指導要領改訂案が、文部科学省から8月1日に発表された。新しい指導要領には、小中高校のそれぞれに新たなアプローチが見られる。何を目指し、何が新しくなるのか。


学習指導要領とは

学習指導要領とは、小中高校などの教育課程(カリキュラム)の基準。各教科のおおまかな内容や教育目標、指導上の留意点などを示したもの。各学校では、この「学習指導要領」や教育法で定められた年間の標準授業時間数を踏まえた上で、カリキュラムを編成している。

学習指導要領は戦後すぐに試案が作成され、1958年以来約10年ごとに改訂が行われている。改訂は今回が7回目。内容の通知や教科書作成のため、告示されてから実際に実施されるまでおよそ3~4年かかる。1998年の改訂では、学習内容を3割削減した「ゆとり教育」路線を打診。しかし世論の批判を受け、2008年改訂で大幅修正を実施した。

急激な社会的変化にも通用する人材に

今回の改訂の前提として、文科省は「情報化やグローバル化など急激な社会的変化の中でも、未来の創り手となるために必要な資質・能力を確実に備えることができる学校教育」を目指すとしている。つまり、世の中が急激に変化する中でも、自らの手で新しい価値を作れる人間像を理想として掲げているといえる。未来を創るためには社会との連動が必要として、放課後や土曜日を利用しながら地域や社会・世界との接点を増やしていく方向性を提示。まさにグローバル化を意識した改訂案であることがわかる。

これを実現するためのツールとして取り入れられたのが「アクティブ・ラーニング」という考え方だ。言い換えれば「能動的学習」。教師から生徒への一方通行ではなく、ディスカッションやディベートを取り入れた授業設計によって、双方向的授業へ転換することを意味している。生徒の能動的な学習を促すのが狙いだ。

主な変更点

その方向性を受けて、以下の改訂が提案されている。

【小学校】
・5、6年生の「外国語活動」が「外国語科」に格上げ。授業数も年35コマ(週1コマ)から70コマ(週2コマ)に増加。
・3、4年生で年間35コマ(週1コマ)の「外国語活動」を新設。
・プログラミング教育を必修化。

【高校】
・国語では「現代の国語」「言語文化」の2つが必修に。
・地理歴史では、現在「世界史」が必修だが、改訂で「歴史総合」が必修に。公民は選択式だったが「公共」として必修になった。

小学校では英語教育の増加。高校では、世界と日本の近現代史を扱う「歴史総合」や、議論や対話を取り入れた「公共」の新設が特徴的といえる。

授業時間数の多さが課題

課題は、コマ数の多さをどう消化するかという点が最も大きい。今回の改定案では、小学4年からは、年間標準授業時数(最低限の授業時間)は1015コマ分、つまり週29コマ相当になる。週の授業時間は、児童の負担などから現行の28コマが限界とされているため、検討が必要となる。今後、時間割作りの工夫について有識者会議で議論し、年内に出す答申に盛り込む予定となっている。


(写真はイメージ)

 
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